触覚若手の会 第15回集会 Haptics Symposium 2022勉強会@オンライン会議

Updates

・2022年5月24日(火):事後報告公開

・2022年5月18日(水):プログラム修正

・2022年4月28日(木):プログラム公開

・2022年3月14日(月):ウェブページ公開


事後報告


2022年5月20日(金)にオンラインにて13名が集まり,触覚若手の会第15回集会 Haptics Symposium勉強会を開催しました.本勉強会は,2部制になっており,前半ではHaptics Symposium 2022に採択された論文を紹介することで研究動向を調査しました.後半では,本勉強会の特色である疑似査読者会議を実施することで,採択された論文の特徴を理解するとともに,査読者の観点からの論文の評価の方法を体験しました.


論文紹介

各参加者はランダムに割り振られた論文1本を事前に読み,その内容を口頭発表をしました.本勉強会で扱った論文は事前に幹事団によって,触覚ディスプレイ,計測・レンダリング,心理実験の3つのカテゴリに分類されており,カテゴリごとに発表のセッションを設けました.今回は,初参加の方や学部生の割合が多く,初めは緊張した雰囲気でしたが,しばらくすると参加者の皆さんは積極的に議論に参加し,和気あいあいとした雰囲気で発表が行われていました.また,参加者の中には,論文の内容だけではなく,読んだ感想も報告することで,議論の発展つなげようとしている方もいました.



疑似査読者会議

当初は事前に分けた3つのカテゴリで疑似査読者会議を実施する予定でしたが,欠席者がいたため,「触覚ディスプレイ」と「計測・レンダリング」の2つのカテゴリでグループを作り,疑似査読者会議を実施しました.ここでは,各グループごとにベストペーパー1本を選定するために,評価基準の決定,その基準に基づく論文の評価を行いました.


触覚ディスプレイのグループでは,評価基準を決めるために,デバイス研究で重要な点を洗い出しました.そして,デバイスのオリジナリティ,デバイスの重要性,デバイスの評価の妥当性の三項目を評価基準としました.参加者は担当した論文を各項目5点満点で評価し,他の参加者はそのスコアについての妥当性について議論しました.本グループで扱った論文のクオリティは高かったですが,なかには一発ネタ感がありデバイスの重要性に欠けるものや評価実験の設計が甘いものがありました.議論の結果,特にデバイス自体のオリジナリティが高かった下記の論文をベストペーパーとしました.


論文名:LRAir: Non-Contact Haptics Using Synthetic Jets

担当者:浜崎拓海


計測・レンダリングのグループの評価基準は,新規性,重要性,再現性と触覚ディスプレイのグループの評価基準に近いものがありましたが,さらに論文の読みやすさを評価基準に加えていました.論文の読みやすさを公平に評価するには,グループ全員が全ての論文を読む必要がありますが,疑似査読者会議中にそれを実施することは現実的ではありません.そこで,グループのメンバが普段論文を読むときに気になるところを列挙し,論文の読みやすさの具体的な基準を設けました.その結果,論文の読みやすさに重要な点として,①リサーチクエスチョンがはっきりしている,②論文の構造が書いてある,③実験方法がイメージしやすい,④アブストで内容が把握できる点が挙がりました.以上の基準をもとに論文を評価しました.その結果,新規性については,どの論文も満点でしたが,特に検証方法がしっかりと書かれており,再現性が高かった下記の論文をベストペーパーとしました.


論文名:Texture Classification by Audio-Tactile Crossmodal Congruence

担当者:山下藍香


触覚若手の会 ベストプレゼンテーション賞

今回の勉強会から触覚若手の会 ベストプレゼンテーション賞を設立しました.こちらの賞は,日本バーチャルリアリティ学会ハプティクス研究委員会の先生方が若手の活動を後押ししたいということで,設立されたものとなります.本賞の選考のために,論文紹介時の発表の「わかりやすさ」を評価基準に,参加者投票が実施され,その結果をもとに選考委員(委員長:宇治土公さん)によって受賞者1名を決定しました.選考の結果,下記の通り,浜崎拓海さんにベストプレゼンテーション賞を授与することになりました.


受賞者:浜崎拓海(電気通信大学)

担当論文:LRAir: Non-Contact Haptics Using Synthetic Jets

受賞理由:参加者投票の最多得票数を獲得したことに加えて,短い発表時間で論文の内容を網羅的かつ簡潔に説明されており,さらに質問に対する回答が明確だったため.




筆者感想

国際会議の勉強会シリーズは実に6回目となり,若手の会の恒例イベントとなりました.一方で,恒例イベントであるが故に,個人的には勉強会のマンネリ化を懸念していましたが,参加者の世代交代があり,若い参加者にとって,疑似査読者会議を通して査読者心理を探るプロセスは新鮮な体験であったような印象があります.そのため,疑似査読者会議という若手の会特有の勉強会システムは今後も継続できればと思います.また,今回の勉強会から設立したベストプレゼンテーション賞によるものかは分かりませんが,浜崎さんをはじめとする全ての参加者が担当した論文をしっかりと読み込み,内容をわかりやすく伝えるためにスライドや発表方法を工夫していたのが見受けられました.また,質疑に対しても的確に回答し,さらに議論が発展する傾向もありました.過去の同様の勉強会に比べて今回は非常にレベルが高いものとなり,本賞の設立は勉強会における発表のモチベーションアップの一助になったのではないかと思います.本賞の設立にご尽力いただきましたハプティクス研究委員会委員長の嵯峨智先生,副委員長の吉元俊輔先生をはじめとする委員の先生方に心から御礼申し上げます.今後も,若手のプレゼンスの向上を目指した勉強会を企画していきたいと思います!(産業技術総合研究所/田辺健)


Haptics Symposium 2022勉強会とは

IEEE Haptics Symposium 2022で発表された論文を勉強するための会です.論文紹介を参加者全員で行い、IEEE Haptics Symposium 2022で発表された論文内容を広範囲に渡って勉強します.また,疑似査読者会議と呼ばれるセッションで,自分たちでそれらの論文を評価し,どのような基準で論文を採択しているのかを考えます.これらのプロセスを通じて,国際会議で採択されるようなテーマ立案や論文の書き方を勉強します.具体的には以下の内容を考えています.

  • 発表者は5分で自分が読んだ論文を紹介

  • 発表された論文全体をカテゴリ分けすることでトレンドを把握

  • カテゴリ分けした論文に点数を付けてレビューを行い,査読者心理を学ぶ


触覚以外の研究分野の方からの参加も歓迎します!


なお,新型コロナウィルス感染症の状況を踏まえ,第14回集会と同様にオンラインで開催いたします.

開催概要

2022年5月20日(金) 13:30 - (仮)

会場:Zoom(会場のURLは後日発表)

参加方法

下記Google formより,参加登録してください(締切:2022年4月20日(水) 23:59).

登録はこちらから


※基本的に上記の時間全部に参加できる方のみ参加をお願いします.どうしても難しい場合は参加フォームの連絡欄にその旨を記載してください.


飛び入りでの参加希望の場合は,お問い合わせフォームでご連絡ください(ご返信にお時間をいただく場合がございますがご了承ください).


事前準備

  • IEEE Haptics Symposium 2022の論文1本の内容をスライドにまとめて頂きます.

  • 論文は各発表者につきTechnical PaperまたはToH Short Paper 1本を考えています.

  • 論文は各自で取得をお願いしております.諸事情により取得困難な方はお問い合わせからご連絡をお願いいたします.

  • スライド中の文字・画像の量に制約は設けません.自由に作ってください.


スライドの例

  • 1ページ目:タイトル,氏名,所属

  • 2ページ目:Full Paper(Technical paper  or ToH Short Paper)の研究背景,目的,コントリビューション

  • 3ページ目:Full Paperの実験方法

  • 4ページ目:Full Paperの実験結果

発表テンプレート(※テンプレート通りではなくても構いません.)

https://bit.ly/2xKZxsX


発表方法

  • 自己紹介:1分

  • 研究発表:7分

  • 質疑  :3分(Google Docsに記載し,座長が代読)

  • 入れ替え:1分

その他

  • 気軽に発表準備して頂ければと思います.

  • 発表したい論文がある場合には参加登録時にお伝え頂ければ対応します.

プログラム(仮)

  • 12:30  受付開始

  • 13:00-13:10 開会の言葉(田辺)

  • 13:10-13:58 セッション①触覚ディスプレイ(座長:田辺)

    • LRAir: Non-Contact Haptics Using Synthetic Jets

    • A Smart Bracelet Supporting Tactile Communication and Interaction

    • Wearable Haptic Device Presenting Sensations of Fingertips to the Forearm

    • Multi-cue haptic guidance through wearables for enhancing human ergonomics

  • 13:58-14:08 休憩(10分)

  • 14:08-14:56 セッション②計測・レンダリング(座長:宇治土公)

    • Using Digital Image Correlation to Quantify Skin Deformation with Von Frey Monofilaments

    • A low-parameter rendering algorithm for fine textures

    • Tactile Texture Rendering for Electrostatic Friction Displays: Incorporation of Low-Frequency Friction Model and High-Frequency Textural Model

    • Audio-Tactile Reader (ATR): Interaction Concepts for Students with Blindness to Explore Digital STEM Documents on a 2D Haptic Device

  • 14:56-15:06 休憩(10分)

  • 15:06-15:54 セッション③心理実験(座長:前田)

    • Submillimeter lateral displacement enables friction sensing and awareness of surface slipperiness

    • Texture Classification by Audio-Tactile Crossmodal Congruence

    • Surfaces with finger-sized concave feel softer

    • Design and Comparison of Haptic Policies for Human Guidance

  • 15:54-16:20 休憩・ベストプレゼンテーション賞投票

  • 16:20-17:30 疑似査読者会議(座長:中村)(70分)

  • 17:30-17:51 疑似査読者会議の結果報告(座長:中村)(7分×3)

  • 17:51-18:00 表彰式・開会の言葉(中村)

  • 19:00 懇親会

懇親会

時間:19:00~ (予定.勉強会のスケジュールで遅くなることもあります)

会場:オンライン飲み会(Zoom)

オーガナイザ

宇治土公 雄介(日本電信電話株式会社 コミュニケーション科学基礎研究所)

田辺 健(産業技術総合研究所)

中村 拓人(東京工業大学)

前田 智祐(豊田中央研究所)

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