触覚若手の会 第9回集会 招待講演「企業で働く触覚研究者」@SICE SI 2019

触覚若手の会 第9回集会 招待講演「企業で働く触覚研究者」は終了しました!
次回もよろしく願いします!!

Updates
・2019年12月12日(木):事後報告を追加
・2019年12月3日(火):参加登録延長
・2019年11月8日(金):講演者情報を追加
・2019年11月1日(金):ウェブページ公開

事後報告

2019年12月11日(水),高松シンボルタワーにて12名の若手触覚研究者で招待講演「企業で働く触覚研究者」を実施しました.今回の講演会は場所が悪かったものの,SICE SI 2019の前日に開催したことから,SICE SIの参加者がこちらにも多く参加していただき,活発な質疑応答が行うことができました.以下に講演を要約および筆者の感想を書きますが,業務に関わる部分もあるので,だいぶぼかして書いています.
そういえば,筆者は何故今の職場や業種で働いているのかということを考えたことはあまりませんでした.回想してみるとあまり深く考えずに博士課程に行って,就職して転職して今に至ります.そんな人間からしてみると他の人の就職の理由というのは非常に興味深いです.

講演①:「産総研ってどんなとこ?」

講演者: 田辺健さん
1人目の講演者は産総研の田辺さんでした.田辺さんは今年の3月に産総研に入所して,そろそろ1年目が終わるフレッシュな方です.参加者の大半は修士課程の学生であり,最近働き始めた人の話というのは非常に気になるところでしよう.
産総研の良い点や悪い点を紹介して頂きました.出向の制度,研究費の支給,若手の育成に関する面がしっかりしており,研究のしやすい環境であるという印象を受けました.
大学の運営交付金は年々減少しており,現在では配分される研究費だけでは研究することが困難な大学が大半です.筆者も過去に大講座で研究室を運営していた時は十数万円しか講座費が配分されていませんでした.一方で,産総研ではまだ研究が可能なレベルの研究費が確保されているようです.
また,テニュアトラックの研究者は研究への専念が推奨されており,任期付きやテニュアに関わらず仕事を割り振る大学と比較すると腰を据えて研究ができるような印象を受けました.他にも,キャリア形成のために40歳以上になると他の機関に出向したり,某元公社のように50歳で実質退職のような仕組みが無いことや,終身まで働くための仕組みが整備されていることから,研究者のキャリアを大事にしているという印象も受けました.
産総研では研究の最終ゴールを社会実装としているというところが,大学での研究とは大きく異なるなと思いました.(大学の研究でも社会実装ということが言われることがあるが,必ずしも社会実装する必要があるわけではないため.) 

講演②:「大企業と企業研究所」

講演者: 前田智祐さん
2人目の講演者は豊田中央研究所の前田さんでした.前田さんはそろそろ3年目が終わる,少し業務になれてきた若手社員という方です.前田さんの話は会社に入ってから数年後にどうなっているかを想像する上では非常に有意義な話になるでしょう.
大手企業の研究所に修士卒で入った場合の,仕事について説明して頂きました.仕事の内容については自由度も高そうであり,研究がしやすい印象を受けました.例えば,他のグループの研究者と自由に業務時間後に研究をするようなことも可能だそうです.また,企業では研修のような期間があるので,そのあたりがいきなり実践に放り込まれる大学とは大きくことなると思いました.ちなみに,大学では着任後早々に授業を担当して実践投入がほとんどです.
研究所というと博士課程を修了しないと行けない印象がありますが,修士からでも行くことは可能ではあるとのことです.しかし,その場合にはマッチングが重要になるようです.
また,大企業の研究所だけあり,必ずアウトプットを出すことが必要であり,そのあたりの感覚は大学とは少し異なるなという印象を受けました.(大学の場合では,成果を出さなくても問題は無い場合があるため) 特に特許が重要であり,その特許が実際の製品に活用される辺り,自分が手掛けた研究が(広く)社会実装に繋がるということは魅力的であると感じました.

講演③:「工学研究者のスタートアップMOT戦略」

講演者: 佐藤未知さん
3人目の講演者は株式会社チカクの佐藤さんでした.佐藤さんは5年目のベテラン社員という感じの方です.学生からするとスタートアップ企業に行くような人は珍しいはずなので,普段聞くことができない話になったと思います.
ある意味前の2人とは全く異なるという印象を受ける起業について発表して頂きました.博士課程在学中に起業に興味を持ち,数日で事業を起こすための基礎を固めたということでした.これは研究者がリスキーな道を取ってしまう研究者ならではの性ということでしょうか.
興味深かったのは起業と研究というのは全く別次元の世界に思われるが,実はサーベイが必要であるというところが共通している等実は研究を通じて普遍的に使えるスキルを身に着けることができるということです.
今回の講演では”ガチャを回す”という言葉が多用されていたのが印象的でした.工学者がある日突然起業することは難しく,パートナーを探すためにガチャを回して良いパートナーを引き当てることが早いそうです.ちなみに,楽にパートナーを見つける方法は?と尋ねたところ,これは運や回数に左右されるとのことでした.パートナーガチャについては,自分も研究を広げるたり資金獲得のために,共同研究者を探すor探されているため,我々も日々ガチャを回しているなということに気づかされました.

フリーディスカッション

フリーディスカッションでは自由闊達に講演者と参加者の間で議論が行われました.
就職活動を控えた大学院生が多く参加しており,自分の専門性を活かして就職活動をするにはとい質問が参加者から出ました.それに対して,前田さんから修士卒で専門性を活かした就職をしたければ,マッチングが必要であるため一般採用ではなく,そうでない特別な採用枠を探す必要があるという回答を頂きました.田辺さんからは特別な採用枠を探すためには,イベントに参加してその際に知り合った人に積極的にコンタクトを取ると良いのではというアドバイスも頂きました.筆者の指導している学生も触覚の研究に関連して身に着けたスキルで就職をしていますが,そのためにインターンのような特別な枠で自分のスキルを売り込んでいたことを思い出しました.
筆者からは何故研究の道に進んだのかという質問をさせて頂きました.田辺さんはスキルを磨くため,佐藤さんは博士課程に進んだ先輩が輝いていたからという回答を頂きました.興味深かったのは前田さんの所属していた研究科では多くの学生が博士課程に行くので,博士課程に行かずに企業で研究するほうが個性的であると思えるためという話でした.筆者は同じ機関の別な研究科を修了しており,修士で修了する学生が大半であったことから,数百m離れているだけで別な世界になっていることに驚きました.
ちなみに,筆者は会社でモノを作りたくないからという良くわからない理由であるということを述べてはいましたが,田辺さんや佐藤さんの話を聞く中で過去に御世話になった自分の師匠の”研究は自由な発想で楽しくできるものである”という言葉を思い出し,博士課程を志した本当の理由を思い出し,初心に帰ることができました.

感想

感想のほうはおおよそ前述してしまいましたが,今回の機会が自分の進路決定に役に立ってくれると良いかなと思っています.自分の指導教員や先輩だけでなく,他の研究室の人達がいつどうやって自分の進路を決めたかという話を知っておくだけでも,何かの役に立つはずです.特に,要素技術では就職することは容易であるものの触覚技術そのものでは仕事をすることが困難であるので,どう学んだことを活かせるかをディスカッション等を通じて日々考えて欲しいと思います.また,こういう機会ではなくても学会や若手の会でも気軽に働くことについて聞いてもらえればいいかなと思います.他にも医療機器,化粧品,他の研究所で勤務している触覚研究をした博士卒の方がいますので,要望があればそういった方々もお呼びする機会も設けられるはずです.

最後に,本会の開催に協力して下さった皆様に感謝申し上げます.

(大阪大学大学院基礎工学研究科 石塚裕己)

招待講演「企業で働く触覚研究者」とは

触覚若手の会運営は大学や公的機関の若手研究者によって運営されています.今回は勉強会でなく,企業で活躍されている博士卒の(元)触覚研究者にざっくばらんに話をしてもらう会を企画しました.具体的なトピックとしては以下を想定しています.
  • 博士課程に進学した理由や進学して良かったことと悪かったこと
  • 企業での業務内容(言える範囲で)と博士課程の研究との関係性
  • 企業から見た大学との違い
  • 企業で働くとどういう生活になるのか(1日,1か月,1年単位)
  • 若手研究者へのメッセージ
  • 若手研究者から先輩研究者への悩み相談
  • 就活体験談と企業で成し遂げたいこと
これ以外にもこういう話が聞きたい!!という要望がありましたら是非御伝え下さい.また,触覚分野の研究を行っている修士・博士の学生だけでなく,触覚分野以外の学生,工学系学科・研究科への進学を希望する学生,気持ちは若いシニア以上の研究者の参加も歓迎します.

開催概要

2019年12月11日(水)13:30 - 16:40(受付開始13:00)
会場:高松シンボルタワー オフィスサポートセンター レンタル会議室
〒760-0019 香川県高松市サンポート2−1
http://www.shikoku-trustec.co.jp/stos/

参加方法

下記のGoogle formより,参加登録をして下さい(締め切り:11月28日(金) 23:5912月6日(金)23:59)
https://forms.gle/RBc681uSTJu3YfpRA

人数に余裕がある場合には,直前まで参加を受け付けます.締め切り後はyounghaptics[at]gmail.comまでご連絡ください(ご返信にお時間をいただく場合がございますがご了承ください).尚,会場の都合により定員に達し次第,登録を締め切る可能性があります.

プログラム

※敬称略

13:00  受付開始

13:30-13:40 開会の言葉(田辺健)

13:40-14:00 参加者の自己紹介

14:00-14:30 講演①

  • 講演者: 田辺健
  • 講演タイトル:「産総研ってどんなとこ?」
  • 司会:永野光

14:30-14:45 休憩

14:45-15:15 講演②

  • 招待講演者:前田智祐
  • 講演タイトル:「大企業と企業研究所」
  • 司会:永野光

15:15-15:30 休憩

15:30-16:00 講演③

  • 招待講演者:佐藤未知
  • 講演タイトル:「工学研究者のスタートアップMOT戦略」
  • 司会:中村拓人

16:00-16:30 フリーディスカッション

  • 司会:中村拓人

16:30-16:40 閉会の言葉(田辺健)

16:40-17:00 撤収 

18:00 懇親会

講演者情報

田辺健

国立研究開発法人産業技術総合研究所人間情報研究部門研究員.博士(工学).2019年筑波大学大学院システム情報工学研究科博士後期課程修了.学生時代はバーチャルリアリティ(岩田・矢野)研究室にて牽引力錯覚に関する研究に従事.

前田智祐

2015年東京工業高等専門学校専攻科卒業.2017年慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)卒業.修士(メディアデザイン学).現在,豊田中央研究所ヒューマンサイエンス研究領域にて,ウェアラブルな触覚提示システム,五感提示システムの開発に従事.KMD Dean’s listおよびAugmented Human 2019 3rd Best paper award,日本バーチャルリアリティ学会学術奨励賞,その他受賞経験を持つ.

佐藤未知

株式会社チカク 共同創業者。2014年 電気通信大学で博士(工学)取得。大学ではVR、触覚の研究に従事。現職では経営やハードウェア製造管理業務のほか、遠隔コミュニケーションや画像処理AIの研究を行う。

懇親会

オーガナイザ

  • 石塚 裕己(大阪大学)
  • 岡崎 龍太(会社員)
  • 田辺健(産業技術総合研究所)
  • 永野 光(神戸大学)
  • 中村拓人(東京工業大学)
  • 蜂須 拓(筑波大学/University of California, Santa Barbara)
  • ヤェム ヴィボル(首都大学東京)

主催

  • 計測自動制御学会システムインテグレーション部門触覚部会
  • 日本バーチャルリアリティ学会ハプティクス研究会

お問い合わせ

younghaptics[at]gmail.com

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